10th Anniversary
没後10年特別企画 Part1
- テレサが語る「淡淡幽情」 -

(1982年 台湾TV特別番組「淡淡幽情」収録時のスナップ)
 1983年2月、香港で発売されたアルバム「淡淡幽情」は、中国の古典の詞に現代のメロディーをつけて歌うというコンセプトのもとに作られたテレサの意欲作。中国人の心を美しい北京語でロマンティックに歌い上げるテレサ。この取り組みは高く評価され、アルバム・オブ・ザ・イヤーにも輝きました。
 この時期制作された特別番組の映像からは様々な古装をまとった美しいテレサを楽しむことができます。そして、番組中テレサは1曲1曲に自ら解説を加えています。が、残念なことに完全版は未だ商品化されていません。
 今回の翻訳は、以前百楽園の戴さんにTV特番のテレサのコントの翻訳をお願いした際に、たまたま同じビデオに収録されていた映像があり、それを一緒に訳してくださっていたものです。
  ということで、ほんの一部ですが、テレサのトークを通じて、テレサの「淡淡幽情」への思い入れを少しでも感じて頂ければ幸いです。
テレビ特番のトークから
 小さい頃、同じ冬の夜に、母からよく古代の詩歌を教えてもらいました。遊び心の強い私は、いくら勉強しても、覚えられませんでした。時間が経って、印象がだんだんと薄れてしまいました。大人になって、特に海外にいる時、たまたま『唐詩宋詞』を読んで、その時の感想は以前と全く違いました。タイムトンネルを通りぬけて、古代詩人の世界に入ったように、人生・国家・郷愁・親情・友情・愛情等、目の前に鮮明に浮かび上がってきました。

 突然、不思議な発想が浮かんできました。蘇東坡、李Uと協力し、中国民族を代表する歌を歌い、歌手として、伝統文化に自分の微力を尽くし、芸術の回廊に自分の足跡を残したいと思いました。ですから、今日(詩人の)沢山の歌を歌えたことも、自分の一つの夢の実現です。ここで自慢できることは、今回私が誘った皆さんは、何百年、何千年来の一流の作詞家です。

 時には、自分は歌を歌っているのではなく、悠久の歴史、荘厳で愛情豊かな中国を語っているような感じがします。さらに、私は一つ小さな願いがあります。それは、皆さんがこれらの歌を愛し、歌って欲しいことです。1千平方キロメートルの土地で、5千年の文化の精華は、歌を通じて次々と世代に伝わります。歌を通じて、子孫に中国人としての楽しみ、悲しみと誇りを永遠に忘れさせないでしょう。

◆但願人長久   宋の時代の蘇東坡は、中国文学史の中で、誰よりも才能が優れている詩人です。
 一生の中には、憂患、不遇が一杯ありますが、彼は現実にどうにもならない不平等を、楽観的、豪邁的な精神と国に対する純真な心で見ていました。彼の人生に対する洒脱な態度は、『宋詞』(宋時代の詞)をこれまでにない新しい世界に導きました。
 杭州から、青島の付近にある密州へ"太守"の職を担当しに行った時、彼は妻を亡くしたばかり、弟とも5年ほど離れていて、自分自身も政界で不安定でした。こういう状態で、彼は中秋明月の日に、世間の冷たさと人生の多変化を感じ、お酒に酔い、永遠に伝わっている『水調頭歌』を書きました。
 人に悲喜・離合があり、月に晴曇・満欠があるが、情けに満ちた詩人は、命の尊さを感じ、命に熱愛を持ち、依然として"但願人長久、千里共嬋娟"(永遠に愛しあって、いくら遠く離れても同じ月を眺めることができるように)を祈っていました。
 秋の夜に、白く輝いた月が高く上がっている空を見上げる時、900年前の彼が酔った気分がわかるかのように、かすかに"広寒宮"(伝説上の月にある宮殿)から伝わってくる気がします。
 
  ◆臙脂涙
 色とりどりに咲き乱れる花は、またたく間に流れる水のように命が過ぎて行き、影も形もなくなってしまいます。人生もそのように悲しみながら慌しく終わってしまうのでしょうか?
 詩歌"鳥夜啼"の作者は李Uです。"南唐後主"とも呼ばれています。わずか15年の皇帝で、国が滅亡した後、捕虜になった彼は、悲惨な生活を送っていました。宋太宗に殺害された時は、まだ42歳の若さでした。不遇な運命、国を無くして、ひどい苦しみを味わった彼は、言い尽くせない哀愁を詩の中に託しました。
 悲惨な境遇にいた李Uは、昔のことを思い出し、栄耀栄華を極めたのは夢のようで二度と戻ってこない、胸に残るものは、深く心に留まる昔への思いと限りない悔やみだと思いました。
 千年後の現在、彼の詩を読むと、詩の字間に含まれている彼の哀愁と涙が、多感である中国人の心に訴えてきます。

 
(翻訳:戴慧卿さん)

※2曲だけですみません。将来全曲アップできますように...

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